【Chris Lord-Alge(クリス・ロード・アルジ)が語るMixのTips】から学ぶミキサーの心得 vol.3

ちゃたけです。

前記事、vol.2では、

自分が必ず使うプラグイン、お気に入りのプラグインをショートカットメニューに入れておく
テンプレートセッションを用意しておこう
過去に自分が手掛けたミックスデータは、全て自分のライブラリー
自分だけのプリセットライブラリーを作ろう
インサートスロットの一番上のスロットは空けておこう

を学びました。

ちゃたけです。世界一有名なミキシングエンジニアと言われる、Chris Lord-Alge(クリス・ロード・アルジ)がインタビュー形式で送るミキシングのTipsムービーから、大切なミキサーの心得を学ぼう。ミックスに悩む全ての人へ。全5回のvol.2。

それでは、vol.3に進みましょう。

スポンサーリンク

【Chris Lord-Alge(クリス・ロード・アルジ)が語るMixのTips】から学ぶミキサーの心得 vol.3

AUXトラックは最初から準備する、CLAが語るTips
AUXトラックは最初から準備する、CLAが語るTips

ミックスを始める前に、AUXバス・トラックもあらかじめ用意しておくこと

「ペア・トラック用のバスは多くの人が作っていると思うけど」

これは恐らく、
キーボード Lch & Rch
ドラムTopマイク HH側&Floor Tom側

の様に、本来ステレオトラックでペアで扱う様な音源が、モノトラック×2の状態で収録されているものを、ステレオAUXバスにまとめてステレオで扱うということかと思います。

日本でもたまにこういうセッションデータを受け取ることもありますし、海外では多いのかもしれません。
LIVE収録のセッションデータでは特に見かける事が多いです。
これは単に録音した人の習慣だったり、現場の便宜上そうなっただけだったりするので、ステレオで扱えるならステレオトラックを作って移しちゃっても構いません。
僕はいつもそうしちゃってます。
その方が楽ですからね。

「コーラストラックが6トラックあるとしたら、その6トラックを最初から1つのバスにまとめてしまう」

メインボーカルに対するハモコーラスは、上ハモだったり下ハモだったり、時にはその両方だったり。
・1本のハモなら1ch。
・ダブルなら2ch。
・上・下ハモでダブルなら4ch。
まぁ、多くても4chくらい。

それに対してコーラスは、シンプルなウーアーコーラスだったとしても、
・Hi ×2
・Mid ×2
・Low ×2
一番オーソドックスな3声ダブルで6ch。
時にはもう1声増えて8chの場合もあるし、曲の中に別のコーラスが2種類、3種類ある事も多い。

トラック数は膨大ですね。
その膨大なトラックの一つ一つに、同じようなプラグインチェーン(組み合わせ)を用意して1トラックずつ別々に処理するべきか?

答えは、No です。
そんなことしてたらプラグインパワーを食いまくってCPUが追いつかない。
CPUパワーの余力は常に残しておきたいもの。
CPUパワーギリギリでミックスを完成させてクライアントに聞かせたら、変更が出てさらに重たいプラグインを使わざるを得なくなったら、、、もう挿せなくて困っちゃう。
そうならないように、
常にプラグインの無駄遣いを減らしてCPUパワーの節約を心がけましょう

それに、1トラックのプラグインチェーンで音作りが出来たら隣にコピペしていったとしても、何か変更したらまたその都度コピペしていかないといけなくなる。
そんなのは面倒だ。

共通の処理を行うならバスでまとめる

そしてトラックの色分けをして、バスにまとめる素材トラックとバスマスターとを整理整頓しておくとわかりやすいですね。

例えば、素材トラックを暗い色に、バスでまとめた先のバスマスターのAUXトラックは同系色の明るい色にする。

パラレルプロセッシングバス
これは例えば、キックやスネア、ベース等をAUXセンドでディストーションプラグインに送って、並列処理して、原音に歪成分を足すようなテクニック。

そして最終的な行き先であるマスターバスや、エフェクト等のAUXバスを用意して、自分の決めたルールで同じ場所に配置する。
そのミックス・テンプレートを作る作業を、出来ればミックス前の準備段階や、音作りの最初にやっときましょうという事。

セッションのレイアウトをルーティン化しておく。
これらはvol.1でも触れた、ロケーション・ルーティン ですね。
そして、vol.2で触れた、テンプレートの大切さ

何度も同じことが話に出てくるのは、それが本当に重要だから。

編集はミックスまでに済ませておく。
リバーブやディレイなども全てあらかじめ準備して設定しておく。
テンプレートセッションやプラグインショートカット、プラグインプリセット等を有効に使って、よく使う必要なものを素早く手に入れ、ミックスの準備をしておくこと。

バスを追加してAUXエフェクトトラックを作って、プラグインを選んで、試して、エフェクトの設定をしていると、時間が過ぎるのはあっという間だし、実際に音作りしている時間より構築している時間の方が長くて、それは本当にストレスになる。

ミックスしながら全て一つ一つ追加していくのは時間もかかるし非効率で困難な作業。
よく使うものを考えて、先に準備して並べておくのだ。

外すことは簡単。
いちいち足していくのは大変。

準備をしっかりしておくことがミキシングを素早く進めるコツ

「それがすべて」

コーラスをまとめるAUXトラックにはどんなプラグインを?

SSL E Channel (EQ&ゲート)

低域のボワつきを取り除く。
ゲートで不要なノイズをカットする。
つまり、コンプ(CLA-76)へ入る前の音を掃除する。

CLA-76 (コンプレッサー)

CLA Vocals (エフェクト)

追加のコンプレッション、EQ、必要ならリバーブやディレイも。

「必要ならL1(リミッター)を前後に挟むのもいいね。」
コンプだけで足りず、まだ暴れてるか、音がまだ弱々しくて物足りないなら、
追加のL1でダイナミクスをより平坦にしてから音圧を上げてパワフルに扱いやすくするということかな。

Wavesのプロモーションムービーなので、Wavesのプラグインだけで、しかもクリス本人監修のプラグイン達で構成されたチェーンなので、どこまでセールストークなのか、本当にミックスで実際に使っている組み合わせなのか、本意はわからないがその意図は汲み取れる。

コンプに入る前に、EQやゲートで不要な部分はカットしておく。
コンプレッションは1台では賄いきれない場合が多く、無理をすればダイナミクスや音質が破綻するので、複数のゆるやかなコンプで数段に分けて処理するなり、役割分担させる。
CLA Vocalsでリバーブやディレイをかけるということは、他のパートと共用しているAUXエフェクトにセンドで送ることとは違い、インサートでかかるので他との分離が良く、より明確なエフェクトがオケに埋もれず発揮出来るだろう。

このプラグインチェーンはあくまでも一例であって、別に真似をすれば必ず良い結果を生むなんて保証は無い。
周りのオケとの兼ね合いや、録音状況にいくらでも左右される。
実際このチェーンでかけると、きっと強烈に存在感の強い音になるんではないかな。
周りもそれ相応に強ければバランスが成り立つが、このパートだけ強くなるとオケに馴染まず浮いてしまうだろう。

あるパートだけこだわってド派手にしても全体のバランスやアレンジは成り立たない。

周りを見渡して、そのパートの役割・立ち位置を見極めて、全体でのバランスを取ることが大事

トラックを重ねるほどノイズも積み上がる

コーラスでもギターでも、ドラムでも、生演奏を録音したトラックには、不要なノイズが必ず含まれている。
シンセでも録音状況が悪いとノイズが乗っているかもしれない。
トラック数が重なるとそのノイズが積み上がり、問題となる。
特に最近のミックスでは、リミッターやマキシマイザーで音圧をかなり強烈に稼ぐので、不要なノイズも同時に強烈に持ち上がる。
それは大問題となるのだ。

理想は、というか必ずやるべき事だが、一つ一つのトラックを耳で音を、目で波形を確認しながら、ゴミを事前に掃除しておく。
よっぽど時間に追われたプロジェクトでない限り、録音してOKテイクが出来上がったら綺麗に不要な部分をカットしてお掃除してしまうのが通常だ。
それを怠ってミキサーにセッションファイルを渡せば、ミキサーはミックスする時間よりもお掃除する時間に手間取ってしまう。
ミキサーにつけを回すのは止めましょう。(切実)

演奏していない部分はカットしておく。
ギターやベース等、演奏の前後にブーといった感じのハムノイズなんかがだいたい鳴ってるので、波形を拡大して綺麗に取り除く。
タムはノイズというよりはかぶりだが、人それぞれ好みによるが、叩いてない部分は僕は必ずカットしている。
いくつものコンプ、マキシマイザーを経由して増幅されるので、かぶりも一緒に増幅されると都合が悪い。
コーラスは6~8本なりトラックが重なるので、ブレスの強さやタイミングがバラバラだと、バスでまとめて処理しても揃って聞こえずバラついてしまう。
入念に不要な部分はカットして、出来ればブレスのタイミングやボリュームも綺麗に揃えよう。

ただ、これらのお掃除のエディットは時間がないと出来ない。
整理されていないセッションファイルを受け取ってお掃除する時間が無ければ、せめてEQとゲートで不要な部分はカットしよう。
ばっちりの設定を見つけるのはなかなか難しいが、上手くいけば不要なノイズだけ抑える事ができる。

EQとゲートで不要な帯域やノイズをカットする処理をするだけで仕上がりはグッと良くなる

AUXバスでまとめて処理してそのままうまくいけば良いが、素材トラックの中にはダイナミクスがあまりにバラバラだったり、そもそも音量の差があったり、音質の差があったりすることも多い。
それをバスでまとめて処理しても思い通りにはいかないので、素材トラック各々に、EQやコンプ・ゲート、ディエッサー等、トラックごとの事情に合わせた下処理をしたうえで、バスにまとめればきっとうまくいくだろう。

vol.3 まとめ

共通の処理を行うならバスでまとめる
常にプラグインの無駄遣いを減らしてCPUパワーの節約を心がけましょう
準備をしっかりしておくことがミキシングを素早く進めるコツ
周りを見渡して、そのパートの役割・立ち位置を見極めて、全体でのバランスを取ることが大事
トラックを重ねるとノイズも積み上がる
→ EQとゲートで不要な帯域やノイズをカットする処理をするだけで仕上がりはグッと良くなる

以上、vol.3でした。

重複する内容も度々出てきますが、それだけ大事なTipsだということで是非実践に役立てましょう。

vol.4へ、つづく。

ちゃたけ

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする